がんとつきあう(がん治療の副作用)吐き気(はきけ)・嘔吐(おうと)の原因がん患者さんの吐き気・嘔吐には、いくつかの原因があります。ここではその原因について、それぞれご紹介します。がん治療が原因となる場合(治療に伴う副作用)抗がん剤や分子標的薬などのお薬吐き気・嘔吐を引き起こす原因として、抗がん剤や分子標的薬などによるがん治療が挙げられます※1。抗がん剤や分子標的薬などのお薬が吐き気・嘔吐を生じさせる理由としては、脳の嘔吐中枢を刺激すること※1や、細胞分裂が活発な口や消化管の粘膜といった正常な細胞に影響すること※2が挙げられます。抗がん剤や分子標的薬などの薬物治療による吐き気・嘔吐は、お薬の種類や量によって、治療から数時間以内に起こることや、一日以上たってから起こることがあります※3。多くの場合、同じ治療方法であれば、吐き気・嘔吐が起こる時期は同じタイミングであることが多いですが、なかには治療後数日たってから起こることもあるため、しばらくは体調の変化に気をつけるとよいでしょう。放射線療法放射線療法は、細胞分裂が活発な消化管や口の粘膜など正常細胞にも影響を与えやすく、倦怠感(だるさ)から吐き気・嘔吐が生じることがあります※2。放射線療法による吐き気・嘔吐は放射線を照射した当日から数日までの時期に多くみられ、一過性であるとされています※2。そのほか医療用麻薬などによる薬物治療、手術や麻酔などの影響によって、ムカつきや吐き気・嘔吐を催すことがあります※3。精神的要因治療に伴う緊張や不安、過去の治療に対する不快なイメージや体験、不快なにおいなど、精神的・心理的なことが引き金となり、吐き気・嘔吐が生じることがあります※1,2。吐き気・嘔吐を生じやすい要因吐き気・嘔吐を生じやすい要因として、以下のようなものが挙げられます。若年である※1,4女性である※1,4不安が強い※2前の治療で強い吐き気があった※4乗り物酔いをしやすい※4妊娠時につわりがひどかった※4喫煙の経験がない※1お酒を飲む習慣がない※1,4など吐き気・嘔吐は、治療の副作用はもとより不安などの精神的要因も影響する※3ことから、治療の前から予防や対策をしていくという視点も必要です※1。そのためには、普段から吐き気や嘔吐を含めた自覚症状や、治療に伴う体調の変化などを主治医やそのほかの医療スタッフに話しやすい関係を作っておくことが大切です。実際に吐き気・嘔吐を感じたら、程度にかかわらず我慢しないで、医療スタッフにどのような対応ができるか相談しましょう。なるべく早い時期に伝えることで、効果的な対応が可能になり、不快な症状を和らげながら安全に治療を継続することができるようになります。※1 「制吐薬適正使用ガイドライン」2023年10月改訂【第3版】(編集:日本癌治療学会)http://www.jsco-cpg.jp/antiemetic-therapy/ (2025/8/21参照)※2 ≪がん看護実践ガイド≫がん治療と食事 治療中の食べるよろこびを支える援助. 監修; 日本がん看護学会, 医学書院, 2016年6月, 東京.※3 国立がん研究センター がん情報サービス 吐き気・嘔吐 ~がんの治療を始める人に、始めた人に~https://ganjoho.jp/public/support/condition/nausea/index.html (2025/8/21参照)※4 小林由佳, 中西弘和. がん化学療法に伴う摂食障害(悪心嘔吐、味覚異常など)の対策. 静脈経腸栄養 2013; 28: 627-634.【監修】帝京大学医学部内科学講座腫瘍内科 渡邊清高 先生更新年月:2025年9月ONC46P015A