がん患者さんのお悩み相談室 ~がんとお金~がん治療にはどのような費用がかかるのか? Q.がん治療はお金がかかるイメージがあります。どのような費用がかかりますか? 直接治療にかかるお金とその他にかかるお金、自己負担額の上限を知っておくとよいでしょう 「がんの治療にはたくさんのお金がかかるのでは?」と心配される患者さんやご家族は、少なくありません。病院での治療にかかるお金とそれ以外にかかるお金、健康保険が適用される治療とそうでない治療、高額な医療費がかかったときに利用できる制度などについて理解しておくと、少しでも不安が軽減されるはずです。 直接治療にかかるお金 健康保険で自己負担が軽減される「直接治療にかかるお金」は次のとおりです。 血液検査、CT、レントゲン、エコーや生検などの検査費用 診察費用 手術費用 調剤薬局で支払う薬代 病院で支払う抗がん剤治療などの薬代 入院基本料(食事代(標準負担額まで)や差額ベッド代などを除く) など 多くの治療が保険診療で行えますし、入院した場合にかかる入院基本料にも保険が適用されます。ただし、臨床試験(一部の試験を除く)や、先進医療(※)など、健康保険等が適用されない治療もありますので、治療方針を主治医と話す際に確認するとよいでしょう。 その他にかかるお金 健康保険の対象にならない「その他にかかるお金」の代表的な項目は、次のとおりです。特に入院時にかかる費用は病院によって異なりますので、入院案内をしっかり読んでおきましょう。 通院のための交通費(ガソリン代を含む) ご家族が病院に付き添うための費用 診断書や生命保険会社への証明書の作成料 入院時の日用品や消耗品、寝衣代、テレビカード 入院時の個室代(差額ベッド代)、食事代 医療用かつらの購入費 など 「その他にかかるお金」も、ご本人またはご家族が1年間に10万円を超える医療費を支払った場合、確定申告をすれば税金が戻る、「医療費控除制度」が利用できるものもあります。治療に関わる諸費用の医療費控除の明細書又は医療保険者等が発行した医療費通知は、必ず保管しておきましょう。発行されないものも認めてもらえる可能性がありますので、療養日記などに記録しておくことをお勧めします。また、介護や養育が必要なご家族がいらっしゃる場合には、サポートにかかる費用を見込んでおく必要があるでしょう。 高額療養費制度を活用する がんの治療を受ける方に利用していただきたい制度が、医療費支払いの自己負担を軽減する、高額療養費制度です。病院や薬局で1ヶ月間に支払う金額が一定額(自己負担限度額)を超えた場合、超えた金額が後で払い戻されます。高額療養費の自己負担限度額は、年齢や所得区分に応じて決められています。ご自身の自己負担の上限がいくらになるか、あらかじめ知っておくと安心です。 また、事前に「限度額適用認定証」を申請すると、窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめることができます。ご自身が加入している保険者(健康保険組合、協会けんぽ≪全国健康保険協会≫、共済組合、国民健康保険など)に申請することで、認定証が交付されます。受診時に医療機関等の窓口に提示すると、1ヶ月の支払いを自己負担限度額までにとどめることができ、高額な医療費を一時的に立て替える必要がなくなります。治療費が自己負担限度額を超えるかどうか分からなくても申請はできますので、事前に手続きをしておくとよいでしょう。 まとめ:治療に関わる費用項目と、高額療養費制度を知っておく 治療に関わる費用項目を知っておくだけでも、家計とのやりくりなど、ある程度の心づもりができるのではないでしょうか。また医療費の個人負担には毎月上限があるなど、公的に利用できる補助制度や控除があることも知っておきましょう。お金に関する疑問を解消して、安心してがん治療を受けていただきたいと思います。 【出典】以下のサイトを参考にしています。 入院時食事療養費【全国健康保険協会ホームページ】 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31702/1951-254/ 2022/7/22参照 医療費を支払ったとき【国税庁ホームページ】 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/04_1.htm 2022/7/22参照 関連リンク がんになると、どんなお金がかかるの? 高額療養費制度とは 高額療養費の支給申請手続き 【監修】国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター/がん相談支援センター 坂本はと恵氏 更新年月:2022年11月 ONC46M001A