みんなで取り組むがん治療チーム医療に関わる専門家の役割「もしかすると、がんかもしれない」と思い、病院へかかったときから、がんの治療は始まっています。告知や治療の過程で、あなたは「なぜ自分だけがこんな思いをしなければならないんだろう」と孤独感にさいなまれることもあるかもしれません。そんなときは、あなたの治療には数多くの専門家が関わっていることを思い出しましょう。実際に、がんの治療の過程には主治医や看護師といった、あなたと常に接している人たちだけではなく、病理医や麻酔科医など、そのほかにもあなたを支えている人たちがいるのです。それぞれがどういった立場であなたをサポートしているか、知っておくことも大切です。※イラスト内、専門家の名前をクリックすると、各専門家についてのより詳しい内容が表示されます。※このコンテンツはJavaScriptをONにしてご覧ください。 理学療法士 体操やマッサージ、電気刺激など、さまざまな手段を使って患者さんの動作能力を回復させるサポートを行います。病院ではリハビリ室にいることが多いですが、手術後はできるだけ早期にリハビリを開始したほうが効果的とされているため、患者さんのベッドサイドに来て指導する場合もあります。 作業療法士 移動、食事、排泄、入浴など、日常生活で必要となる動作に支障のある患者さんに、折り紙を折る、字を書くなどの、手先の作業を通じてリハビリを指導します。リハビリ室には、キッチンや畳の和室など、生活場面と同じような環境が作られていて、自宅に戻っても支障なく生活できるよう練習します。 管理栄養士 患者さんの病状にあわせて、無理なく必要な栄養素がとれるメニューを作り、食事がとれないときには経管栄養等のエネルギーを補給する方法を考えます。また、咀嚼することが難しい状態にある患者さんについても、できるかぎり口から食事が取れるように、食べやすいメニューや飲み込みやすい調理法を工夫します。栄養サポートチームの一員として、栄養状態の悪い患者さんの病棟を訪問し、医師、看護師、薬剤師などと協力して栄養の改善に取り組みます。 言語聴覚士 声帯を切除したり、発声が不自由であったり、聴覚に障害のある患者さんに対して、失われた機能をなるべく回復するようサポートするスタッフです。日常生活が少しでも快適に行えるような方法をアドバイスします。 視能訓練士 眼科医の指導のもと、視力、色覚、目の動きなど、視機能全般を検査するほか、弱視や斜視などのトレーニングも行います。 リンパドレナージュセラピスト 患者さんの体のむくみを、専門的にトレーニングされたリンパドレナージュセラピストが緩和します。がんの手術でリンパ節郭清を行うと、腕や脚にリンパ浮腫(むくみ)を生じることがありますが、リンパドレナージュを行うことで、リンパ液の流れがスムーズになり、むくみが楽になります。がんの進行によっては禁忌もあるので、医師の診断書が必要な場合があります。主治医に相談しましょう。 歯科医 がんの治療中に口腔内のケアをおろそかにすると、虫歯や歯周病が進行し、感染症の原因になります。がん治療をする前に歯科を受診することはもちろん大事ですが、入院中も口腔ケアは欠かせません。薬物療法や放射線療法で口腔内の粘膜が炎症をおこしたりすることもあるので、必ず受診し、積極的にサポートを受けましょう。 薬剤師 薬局で調剤を行うだけでなく、入院中の患者さんと面談し、薬の説明を行う場合もあります。がんに関する薬剤治療の調整や薬剤指導を行う、がん認定薬剤師もいます。がん治療のために使う薬と持病のために飲んでいる薬の飲み合わせなど、薬のことでわからないことは薬剤師に質問しましょう。 看護師 採血や検査室への移動など、入院生活の全般にわたり、つねに身近にいて患者さんをサポートします。最近では、がん患者を専門にケアする専門看護師や認定看護師も増えています。医師に聞きにくいことでも、看護師になら聞きやすいということも多いもの。入院中だけでなく、外来でも、心配なことがあれば遠慮なく相談してみましょう。 認定看護師 特定の看護分野で熟練した技術と知識を持ち、高い水準で看護を行うスペシャリストを認定看護師といいます。独自の知識と技術を用いて、患者さんやその家族へのケアを行うほか、看護師の指導や相談なども行っています。 専門看護師 特定の専門看護分野において、看護師としての卓越した能力を発揮し、患者さんやその家族へのケアを行うことはもとより、研究などの学才を求められるスペシャリストを専門看護師といいます。 リエゾンナース 精神専門看護師で、がん患者さんとその家族の心のケアを行います。また、病院に勤務するすべての職員の心のケア(メンタルヘルスケア)を担当し、相談に乗ってくれます。リエゾンとは連携、連絡という意味があり、リエゾンナースは患者や医療者の連携など、心をつなげる役割を果たしています。 ソーシャルワーカー(社会福祉士) 安心してがんの治療や療養が行えるよう、治療費の支払いの相談、仕事への影響、家族関係、在宅への移行、転院先の病院の紹介など、療養全般にわたる幅広い相談に応じます。がんの告知を受けると、「治療費はどうしたらいいんだろう?」、「これからの生活はどうなってしまうんだろう?」など、さまざまな不安がでてきます。そんなときこそ、ソーシャルワーカーに相談してみましょう。 放射線科医 レントゲン画像、CT、MRI、エコーなどで、より精密にがんの部位や広がりを画像で診断するのが放射線科医です。近年の機器や技術の進歩によって、腫瘍の位置や形状が3D画像として解析でき、治療がより正確に行われるようになりました。また、放射線科医はがんの放射線治療も行います。近年はラジオ波やガンマーナイフなど、正確にがんを捉える治療が進歩しています。 病理医 患者さんと直接顔を合わせることはありませんが、患者さんから採取した細胞や組織を染色し、顕微鏡で観察することで、がん細胞の性質や種類などを正確に分析するのが病理医です。患者さんの治療方法を決める最も重要な役割であり、どんながん治療でも病理医の確定診断が決め手となります。 臨床検査技師 医師の指示のもと、血液や尿、便などの検体の検査を行う専門家です。そのほか、心電図や超音波検査などを通じて、がん診断の重要な役割を担っています。 放射線技師 医師の指示のもと、X線写真を撮影したり、CTやMRIなどの機械を操作したり、医師から指示された照射線量にもとづいて放射線治療機器を扱ったりする専門家です。がん治療において、患者さんと接する機会が多いため、乳がんの患者さんには女性の放射線技師を担当につける病院もあります。 精神科医・心療内科医 患者さんの心の病気を医学的に診断し、治療する役割です。がん患者さんに多くみられる、適応障害やうつ病をはじめ、統合失調症やノイローゼなどの症状に対して、薬物療法、精神療法、社会療法などで治療していきます。まずは患者さんとの長時間にわたる対話から治療をはじめますが、最近ではカウンセラー(臨床心理士)と共同で回復にあたることも多くなってきました。主に身体に症状が出る心身症を対象に診察しているのが心療内科医です。 精神腫瘍医 がんの患者さんに特化して心のケアを行う専門医ですが、日本にはまだ少なく、精神科医や心療内科医が診療を行っているのが現状です。がん患者さんの約半数に、適応障害やうつ病などの精神疾患の合併がみられたという報告もあり、今後、精神腫瘍医が増えていくことが期待されています。がんにかかったことによって、患者さんの心は大きく揺さぶられます。つらい状態が長引く場合は、早めに相談しましょう。 臨床心理士 精神的なトラブルを抱えた患者さんに対し、主にカウンセリングなどでつらさを軽減する支援を行う役割で、精神科医や心療内科医と共同で患者さんの回復にあたることが多いです。がん告知のショック、再発・転移への不安など、がんとの長いつきあいのなかでは、精神的な苦痛を伴うこともあるでしょう。つらいときには無理をせず、早めに相談しましょう。 チャイルドライフスペシャリスト(CLS) 子供と家族が「病気や入院体験」においてストレスが少ない状況となるように、心理的・社会的に支援を行う専門的医療スタッフです。海外での修学が必要なため、日本にはまだ47人しかいないのが現状です。主に病気を持つ親が子供にどのように接していけばいいのか、子ども自身がストレスと立ち向かうためにどうしていけばいいのかを、患者さんや家族とともに、遊びやおしゃべりを通してサポートします。小児科医や小児心理士も子どものケアについての相談にのってくれるので、心配なことがあるようでしたら相談してみましょう。 内科医 病気になると、患者さんのほとんどがまずは内科を受診するため、内科医ががんの診断・告知を行うことがよくあります。医療機関にもよりますが、内科医は消化器、血液、呼吸器などに分かれて専門的な検査を行い、患者さんの病状を診断し、場合によってはがんの告知を行います。その後、手術が必要な患者さんは外科医へ紹介されますが、早期発見の胃がんや大腸がんを内視鏡で粘膜切除する場合などは、内科医が行うこともあります。 腫瘍内科医 がんの薬物療法を行います。近年、薬物療法の種類は増えており、組み合わせや使い方のバリエーションが豊富になってきました。次々と登場する新薬を、個々の患者さんにあわせて安全に使うためには、内科医のなかでも、より専門的な知識をもつ腫瘍内科医が不可欠とされていますが、日本ではまだ少数にとどまります。外来で薬物治療を行なう患者さんが増え、副作用を軽減しながら高い治療効果を発揮するためにも、薬物治療に精通した腫瘍内科医の活躍が期待されています。 外科医 がんの治療で手術が必要になると、主な担当が内科医から外科医へと変わります。外科医は臓器別に泌尿器、消化器、乳腺などの専門に分かれており、がんの種類や医療機関によっては、外科医が手術だけを行う場合もあれば、検査・診断・告知をはじめ、手術前後の化学療法や終末期治療など、幅広く長期にわたって担当することもあります。 麻酔科医 手術の開始から終了まで、つねに患者さんの全身状態を確認し、麻酔を管理するのが麻酔科医です。手術前には患者さんと面談し、手術の際の麻酔について、種類や手順などを説明します。薬のアレルギーがないか、いま行っている治療はないか、入れ歯を使っていないかなど、必要な情報は必ず伝えましょう。また、緩和ケア専門の医師がいない場合、がんの疼痛管理を麻酔科医が行う場合もあります。 形成外科医 がんの手術でできた傷跡をきれいに治したり、乳がん手術で切除した乳房を再建したり、生活に必要な機能を再建したりと、治療後の患者さんのQOL(生活の質)を高めるために治療を行います。手術痕のせいで人前に出る気になれない、手術した部分がひきつって体の部分を動かしづらいなど、日常生活に影響がある場合は形成外科医に相談してみましょう。 在宅訪問診療医 病院に入院するよりも、住み慣れた我が家ですごしたいと考える人は数多くいます。そういった場合に不可欠なのが、家まで往診してくれる在宅訪問診療医です。積極的な治療を行わなくても、痛みなどの症状をコントロールするのに医師のサポートは欠かせません。闘病していた病院の主治医との連携も必要です。 ケアマネージャー 在宅で介護保険を利用する場合、介護度の認定によって受けられるサービスが決まっています。療養生活を無理なく行うためにも、利用できるサービスをケアマネージャーにプラン二ングしてもらいましょう。患者さんがひとりでできる日常生活上の行為や、手伝ってほしいことを具体的にケアマネージャーに伝え、安心して療養できる環境を作ることが大切です。 訪問看護師 病院よりも、住み慣れた我が家ですごしたいと思ったとき、自宅を定期的に訪問してくれる看護師のサポートは欠かせません。病状によっては、医師とコミュニケーションをとりながら、療養生活の全般と医療も行ってくれます。患者さんだけでなく、家族にとっても医療者がいる安心感があります。どんなことでも相談に乗ってくれる、心強い存在です。 緩和ケア医 「がんと診断されたら、緩和ケアを受けましょう」と国も推進しているように、がんの疼痛や治療に伴う副作用を軽減するのが緩和ケアの役割ですが、実際は、終末期になって初めて緩和ケア医の診察を受ける人が多いようです。緩和ケア医のいる病院も多いとはいえませんが、がんの治療において、疼痛や副作用などの苦痛な症状を感じたら、改善方法はないかどうか早めに相談するようにしましょう。 がんを見つけ治療するまず、臨床検査技師・放射線技師や放射線科医があなたの身体の状態を検査し、その結果をもとに、病理医が中心となって、がんかどうかを診断します。がんであった場合、内科医あるいは外科医があなたにがんであることを告知し、治療計画について話し合います。がんの治療のほとんどは、手術、薬物療法、放射線治療に分かれます。手術の場合は外科医、麻酔科医、形成外科医、薬物療法の場合は外科医、内科医、腫瘍内科医、放射線治療の場合は放射線科医などが中心となって治療を進めていきます。また、告知や再発がわかったときや、治療が思うようにいかなくて落ち込んでしまうときなどは、精神科医、心療内科医、臨床心理士などがあなたの心のケアを担当します。がんの治療をサポートするほかにも、あなたにはたくさんの心強い専門家がついています。入院中や外来の際には看護師があなたを常にサポートします。経済的・社会的な不安については、ソーシャルワーカーに相談しましょう。治療の過程では、歯科医や薬剤師も大事な役割を担います。身体的な不都合が生じた場合は、理学療法士や作業療法士、管理栄養士などがリハビリを計画し、あなたの社会復帰をサポートしてくれるでしょう。がんと上手につきあうがんの治療を続けていくうえで大切なのが、生活の質(QOL)を向上させることです。「身体の痛みを和らげたい」、「安心できる自宅でゆっくり療養したい」などの要望に対して、緩和ケアや在宅医療などが用意されています。がんとは長いつきあいになります。これらを上手に使って、QOLの向上を目指しましょう。自宅療養の場合は在宅訪問診療医やケアマネージャー、緩和ケアの場合は緩和ケア医などの専門家があなたをサポートします。【監修】東北大学大学院医学系研究科 乳腺・内分泌外科学分野 教授 石田孝宣 先生更新年月:2024年10月ONC46O002A理学療法士体操やマッサージ、電気刺激など、さまざまな手段を使って患者さんの動作能力を回復させるサポートを行います。病院ではリハビリ室にいることが多いですが、手術後はできるだけ早期にリハビリを開始したほうが効果的とされているため、患者さんのベッドサイドに来て指導する場合もあります。作業療法士移動、食事、排泄、入浴など、日常生活で必要となる動作に支障のある患者さんに、折り紙を折る、字を書くなどの、手先の作業を通じてリハビリを指導します。リハビリ室には、キッチンや畳の和室など、生活場面と同じような環境が作られていて、自宅に戻っても支障なく生活できるよう練習します。管理栄養士患者さんの病状にあわせて、無理なく必要な栄養素がとれるメニューを作り、食事がとれないときには経管栄養等のエネルギーを補給する方法を考えます。また、咀嚼することが難しい状態にある患者さんについても、できるかぎり口から食事が取れるように、食べやすいメニューや飲み込みやすい調理法を工夫します。栄養サポートチームの一員として、栄養状態の悪い患者さんの病棟を訪問し、医師、看護師、薬剤師などと協力して栄養の改善に取り組みます。言語聴覚士声帯を切除したり、発声が不自由であったり、聴覚に障害のある患者さんに対して、失われた機能をなるべく回復するようサポートするスタッフです。日常生活が少しでも快適に行えるような方法をアドバイスします。視能訓練士眼科医の指導のもと、視力、色覚、目の動きなど、視機能全般を検査するほか、弱視や斜視などのトレーニングも行います。リンパドレナージュセラピスト患者さんの体のむくみを、専門的にトレーニングされたリンパドレナージュセラピストが緩和します。がんの手術でリンパ節郭清を行うと、腕や脚にリンパ浮腫(むくみ)を生じることがありますが、リンパドレナージュを行うことで、リンパ液の流れがスムーズになり、むくみが楽になります。がんの進行によっては禁忌もあるので、医師の診断書が必要な場合があります。主治医に相談しましょう。歯科医がんの治療中に口腔内のケアをおろそかにすると、虫歯や歯周病が進行し、感染症の原因になります。がん治療をする前に歯科を受診することはもちろん大事ですが、入院中も口腔ケアは欠かせません。薬物療法や放射線療法で口腔内の粘膜が炎症をおこしたりすることもあるので、必ず受診し、積極的にサポートを受けましょう。薬剤師薬局で調剤を行うだけでなく、入院中の患者さんと面談し、薬の説明を行う場合もあります。がんに関する薬剤治療の調整や薬剤指導を行う、がん認定薬剤師もいます。がん治療のために使う薬と持病のために飲んでいる薬の飲み合わせなど、薬のことでわからないことは薬剤師に質問しましょう。看護師採血や検査室への移動など、入院生活の全般にわたり、つねに身近にいて患者さんをサポートします。最近では、がん患者を専門にケアする専門看護師や認定看護師も増えています。医師に聞きにくいことでも、看護師になら聞きやすいということも多いもの。入院中だけでなく、外来でも、心配なことがあれば遠慮なく相談してみましょう。認定看護師特定の看護分野で熟練した技術と知識を持ち、高い水準で看護を行うスペシャリストを認定看護師といいます。独自の知識と技術を用いて、患者さんやその家族へのケアを行うほか、看護師の指導や相談なども行っています。専門看護師特定の専門看護分野において、看護師としての卓越した能力を発揮し、患者さんやその家族へのケアを行うことはもとより、研究などの学才を求められるスペシャリストを専門看護師といいます。リエゾンナース精神専門看護師で、がん患者さんとその家族の心のケアを行います。また、病院に勤務するすべての職員の心のケア(メンタルヘルスケア)を担当し、相談に乗ってくれます。リエゾンとは連携、連絡という意味があり、リエゾンナースは患者や医療者の連携など、心をつなげる役割を果たしています。ソーシャルワーカー(社会福祉士)安心してがんの治療や療養が行えるよう、治療費の支払いの相談、仕事への影響、家族関係、在宅への移行、転院先の病院の紹介など、療養全般にわたる幅広い相談に応じます。がんの告知を受けると、「治療費はどうしたらいいんだろう?」、「これからの生活はどうなってしまうんだろう?」など、さまざまな不安がでてきます。そんなときこそ、ソーシャルワーカーに相談してみましょう。放射線科医レントゲン画像、CT、MRI、エコーなどで、より精密にがんの部位や広がりを画像で診断するのが放射線科医です。近年の機器や技術の進歩によって、腫瘍の位置や形状が3D画像として解析でき、治療がより正確に行われるようになりました。また、放射線科医はがんの放射線治療も行います。近年はラジオ波やガンマーナイフなど、正確にがんを捉える治療が進歩しています。病理医患者さんと直接顔を合わせることはありませんが、患者さんから採取した細胞や組織を染色し、顕微鏡で観察することで、がん細胞の性質や種類などを正確に分析するのが病理医です。患者さんの治療方法を決める最も重要な役割であり、どんながん治療でも病理医の確定診断が決め手となります。臨床検査技師医師の指示のもと、血液や尿、便などの検体の検査を行う専門家です。そのほか、心電図や超音波検査などを通じて、がん診断の重要な役割を担っています。放射線技師医師の指示のもと、X線写真を撮影したり、CTやMRIなどの機械を操作したり、医師から指示された照射線量にもとづいて放射線治療機器を扱ったりする専門家です。がん治療において、患者さんと接する機会が多いため、乳がんの患者さんには女性の放射線技師を担当につける病院もあります。精神科医・心療内科医患者さんの心の病気を医学的に診断し、治療する役割です。がん患者さんに多くみられる、適応障害やうつ病をはじめ、統合失調症やノイローゼなどの症状に対して、薬物療法、精神療法、社会療法などで治療していきます。まずは患者さんとの長時間にわたる対話から治療をはじめますが、最近ではカウンセラー(臨床心理士)と共同で回復にあたることも多くなってきました。主に身体に症状が出る心身症を対象に診察しているのが心療内科医です。精神腫瘍医がんの患者さんに特化して心のケアを行う専門医ですが、日本にはまだ少なく、精神科医や心療内科医が診療を行っているのが現状です。がん患者さんの約半数に、適応障害やうつ病などの精神疾患の合併がみられたという報告もあり、今後、精神腫瘍医が増えていくことが期待されています。がんにかかったことによって、患者さんの心は大きく揺さぶられます。つらい状態が長引く場合は、早めに相談しましょう。臨床心理士精神的なトラブルを抱えた患者さんに対し、主にカウンセリングなどでつらさを軽減する支援を行う役割で、精神科医や心療内科医と共同で患者さんの回復にあたることが多いです。がん告知のショック、再発・転移への不安など、がんとの長いつきあいのなかでは、精神的な苦痛を伴うこともあるでしょう。つらいときには無理をせず、早めに相談しましょう。チャイルドライフスペシャリスト(CLS)子供と家族が「病気や入院体験」においてストレスが少ない状況となるように、心理的・社会的に支援を行う専門的医療スタッフです。海外での修学が必要なため、日本にはまだ47人しかいないのが現状です。主に病気を持つ親が子供にどのように接していけばいいのか、子ども自身がストレスと立ち向かうためにどうしていけばいいのかを、患者さんや家族とともに、遊びやおしゃべりを通してサポートします。小児科医や小児心理士も子どものケアについての相談にのってくれるので、心配なことがあるようでしたら相談してみましょう。内科医病気になると、患者さんのほとんどがまずは内科を受診するため、内科医ががんの診断・告知を行うことがよくあります。医療機関にもよりますが、内科医は消化器、血液、呼吸器などに分かれて専門的な検査を行い、患者さんの病状を診断し、場合によってはがんの告知を行います。その後、手術が必要な患者さんは外科医へ紹介されますが、早期発見の胃がんや大腸がんを内視鏡で粘膜切除する場合などは、内科医が行うこともあります。腫瘍内科医がんの薬物療法を行います。近年、薬物療法の種類は増えており、組み合わせや使い方のバリエーションが豊富になってきました。次々と登場する新薬を、個々の患者さんにあわせて安全に使うためには、内科医のなかでも、より専門的な知識をもつ腫瘍内科医が不可欠とされていますが、日本ではまだ少数にとどまります。外来で薬物治療を行なう患者さんが増え、副作用を軽減しながら高い治療効果を発揮するためにも、薬物治療に精通した腫瘍内科医の活躍が期待されています。外科医がんの治療で手術が必要になると、主な担当が内科医から外科医へと変わります。外科医は臓器別に泌尿器、消化器、乳腺などの専門に分かれており、がんの種類や医療機関によっては、外科医が手術だけを行う場合もあれば、検査・診断・告知をはじめ、手術前後の化学療法や終末期治療など、幅広く長期にわたって担当することもあります。麻酔科医手術の開始から終了まで、つねに患者さんの全身状態を確認し、麻酔を管理するのが麻酔科医です。手術前には患者さんと面談し、手術の際の麻酔について、種類や手順などを説明します。薬のアレルギーがないか、いま行っている治療はないか、入れ歯を使っていないかなど、必要な情報は必ず伝えましょう。また、緩和ケア専門の医師がいない場合、がんの疼痛管理を麻酔科医が行う場合もあります。形成外科医がんの手術でできた傷跡をきれいに治したり、乳がん手術で切除した乳房を再建したり、生活に必要な機能を再建したりと、治療後の患者さんのQOL(生活の質)を高めるために治療を行います。手術痕のせいで人前に出る気になれない、手術した部分がひきつって体の部分を動かしづらいなど、日常生活に影響がある場合は形成外科医に相談してみましょう。在宅訪問診療医病院に入院するよりも、住み慣れた我が家ですごしたいと考える人は数多くいます。そういった場合に不可欠なのが、家まで往診してくれる在宅訪問診療医です。積極的な治療を行わなくても、痛みなどの症状をコントロールするのに医師のサポートは欠かせません。闘病していた病院の主治医との連携も必要です。ケアマネージャー在宅で介護保険を利用する場合、介護度の認定によって受けられるサービスが決まっています。療養生活を無理なく行うためにも、利用できるサービスをケアマネージャーにプラン二ングしてもらいましょう。患者さんがひとりでできる日常生活上の行為や、手伝ってほしいことを具体的にケアマネージャーに伝え、安心して療養できる環境を作ることが大切です。訪問看護師病院よりも、住み慣れた我が家ですごしたいと思ったとき、自宅を定期的に訪問してくれる看護師のサポートは欠かせません。病状によっては、医師とコミュニケーションをとりながら、療養生活の全般と医療も行ってくれます。患者さんだけでなく、家族にとっても医療者がいる安心感があります。どんなことでも相談に乗ってくれる、心強い存在です。緩和ケア医「がんと診断されたら、緩和ケアを受けましょう」と国も推進しているように、がんの疼痛や治療に伴う副作用を軽減するのが緩和ケアの役割ですが、実際は、終末期になって初めて緩和ケア医の診察を受ける人が多いようです。緩和ケア医のいる病院も多いとはいえませんが、がんの治療において、疼痛や副作用などの苦痛な症状を感じたら、改善方法はないかどうか早めに相談するようにしましょう。