がん患者さんのお悩み相談室 ~がんと仕事~がんと診断されたら、会社にはどう伝えるか?

Q.がんと診断されました。会社にどのように伝えればよいのか、悩んでいます

がんの治療期間など、会社が知りたいことをシンプルかつ正確に伝える

心配ごとが押し寄せてきても、あわてないで

がんと診断された直後の状態を、「ある日突然、洗濯機に放り込まれてグルグルと渦に巻かれているような気持ち。何が分からないのか、何に悩んでいるのか、何をどうすればよいのか、あらゆる方向から不安が押し寄せてきてパニック状態」と表現された患者さんがいらっしゃいます。特に仕事に関しては、収入、すなわちご自身やご家族の生活に直結することですから、さまざまな心配ごとが頭を駆けめぐり、「どうしよう」と悩まれるのは当然のこと。ほとんどの人が、がんについてはほんの少しの知識の中で、混乱してしまいます。まず、あわてずに一つひとつ正確な情報を得ていきましょう。

がんの疑いがあるとの説明から、正式な診断・治療方針が示されるまでには、2週間~1カ月程度時間がかかる場合があります。この段階では、「今は何も明らかになっていないので、会社に話せることはない」と思いがちですが、職場の方も心配されているかもしれません。この時期にはご自身の今の状況と見通しを、先に伝えておくとよいでしょう。「がんの疑いがあり、正式な診断を待ちながら病院に通っている」こと、「いつごろ何が分かりそうか」、「それまでに休みをとる可能性」など、その時点で分かっていること、先にならないと分からないことを整理して伝えれば、会社側も心構えができます。

上司や同僚にも正しい情報を

「会社にがんのことが分かったら解雇されるのでは」、「周りに迷惑をかけてしまうのでは」と、不安な気持ちを持つ方もいらっしゃるでしょう。特に属人的な業務を担っている人、少人数の会社に勤めている人などは、業務に直接大きな影響が出ることを恐れて、なかなかがんのことを切り出せず、会社側も様子がおかしいなと思いながらも、本人に聞けないままその場をやり過ごしてしまうかもしれません。

職場にがんのことを伝えるのは、多くの患者さんが悩む事柄です。相談支援センターにも、「みなさんはどうされていますか?」と尋ねてこられる人が多いといいます。上司や同僚は、患者さんの状況を知ることで、仕事上対応できることもあるでしょう。「もし、自分が逆の立場だったら? 知らされない方がいい?」と、冷静に自分に問いかけてみてください。知ってもらうことで、自分も職場も助かることは多いと思います。病気の時はお互いさまです。物事を複雑にせずできるだけシンプルに、大事な仲間には顔を合わせて直接話をした方がよいでしょう。

大切なのは、上司や同僚の方々にも「正しい情報」を伝えること。では、正しい情報とは何で、どこで手に入るのか?という疑問を持たれるかもしれません。インターネット上には、ありとあらゆる情報が出回り、まさに玉石混淆。国立がん研究センターのがん対策情報センターが運営するサイト「がん情報サービス」など、信頼し得る情報源を参考にしましょう。がん対策情報センターの情報は冊子版もあります。全国のがん診療連携拠点病院で入手することができますから、自分用ともう1冊、職場の方に伝えるツールとして使うこともお勧めです。

【監修】国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター/がん相談支援センター 坂本はと恵氏

更新年月:2022年11月

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