病期の分類法 病期の決定法 肺がんの病期(ステージ)病期の分類法 肺がんと診断されたら、そのがんがどのくらいの大きさなのか、他の臓器まで広がっていないかどうか、さらに詳しく検査を行い、がんの進行度合い(病期、ステージ)を決めます。 病期の評価にはTNM分類と呼ばれる分類法を使用します。これは、がんの大きさと浸潤(しんじゅん)(T因子)、リンパ節転移(N因子)、遠隔転移(M因子)の3つの因子について評価し、これらを総合的に組み合わせて病期を決定する方法です。 肺がんでは、病期は0期、Ⅰ期(ⅠA1、ⅠA2、ⅠA3、ⅠB)、Ⅱ期(ⅡA、ⅡB)、Ⅲ期(ⅢA、ⅢB、Ⅲc)、Ⅳ期(ⅣA、ⅣB)に分類されます。 がんの大きさと浸潤(T因子) T因子(T:原発腫瘍(げんぱつしゅよう) primary Tumor)は「がんの大きさと浸潤」を示します。 がんの大きさと浸潤(がんが周囲の臓器に入り込むこと)の状態によって、13段階に分類します。 TX 原発腫瘍の存在が判定できない、あるいは喀痰または気管支洗浄液細胞診(きかんしせんじょうえきさいぼうしん)でのみ陽性で画像診断や気管支鏡では観察できない T0 原発腫瘍を認めない Tis 上皮内(じょうひない)がん(carcinoma in situ):肺野型(はいやがた)の場合は、充実成分径0cmかつ病変全体径≦3cm T1 腫瘍の充実成分径が3cm以下、肺または臓側胸膜(ぞうそくきょうまく)に覆われている、葉気管支(ようきかんし)より中枢への浸潤が気管支鏡上認められない(すなわち主気管支に及んでいない) T1mi 微少浸潤性腺(びしょうしんじゅんせいせん)がん:部分充実型を示し、充実成分径≦0.5cmかつ病変全体径≦3cm T1a 充実成分径≦1cmでかつTis・T1miには相当しない T1b 充実成分径>1cmでかつ≦2cm T1c 充実成分径>2cmでかつ≦3cm T2 充実成分径>3cmでかつ≦5cm、または充実成分径≦3cmでも以下のいずれかであるもの 主気管支に及ぶが気管分岐部には及ばない 臓側胸膜に浸潤、肺門まで連続する部分的または一側全体の無気肺か閉塞性肺炎がある T2a 充実成分径>3cmでかつ≦4cm T2b 充実成分径>4cmでかつ≦5cm T3 充実成分径>5cmでかつ≦7cm、または充実成分径≦5cmでも以下のいずれかであるもの 壁側胸膜、胸壁(superior sulcus tumorを含む)、横隔神経、心膜のいずれかに直接浸潤 同一葉内の不連続な副腫瘍結節 T4 充実成分径>7cm、または大きさを問わず横隔膜、縦隔(じゅうかく)、心臓、大血管(だいけっかん)、気管(きかん)、反回神経(はんかいしんけい)、食道(しょくどう)、椎体(ついたい)、気管分岐部(きかんぶんきぶ)への浸潤、あるいは同側の異なった肺葉内(はいようない)の副腫瘍結節(ふくしゅようけっせつ) 日本肺癌学会編: 肺癌取扱い規約第8版, 金原出版: 6, 2017 より作表 リンパ節転移(N因子) N因子(N:所属リンパ節 regional lymph Nodes)は「リンパ節転移」を示します。 リンパ節転移の評価ができない場合はNX、リンパ節転移のない場合はN0、転移がある場合にはどこまで転移しているかによってN1~N3の3段階に分類します。 NX 所属リンパ節評価不能(ひょうかふのう) N0 所属リンパ節転移なし N1 がんのある肺と同じ側の気管支周囲かつ/または同じ側の肺門、肺内のリンパ節への転移がある N2 がんのある肺と同じ側の縦隔かつ/または気管分岐部のリンパ節への転移がある N3 がんのある肺と反対側の縦隔、肺門(はいもん)、同じ側あるいは反対側の前斜角筋(ぜんしゃかくきん)(首の筋肉)、鎖骨上窩(さこつじょうか)(鎖骨の上のくぼみ)のリンパ節への転移がある 日本肺癌学会編: 肺癌取扱い規約第8版, 金原出版: 6, 2017 より作表 遠隔転移(M因子) M因子(M:遠隔転移 distant Metastasis)は「遠隔転移」を示します。 転移がない場合はM0、転移がある場合にはM1に分類します。 M0 遠隔転移なし M1 遠隔転移がある M1a がんのある肺と反対側の肺内の結節、胸膜または心膜の結節、悪性胸水(あくせいきょうすい)(がんのある肺と同じ側、反対側)、悪性心嚢水(あくせいしんのうすい)がみられる M1b 肺以外の一臓器(いちぞうき)への単発遠隔転移がある M1c 肺以外の臓器または多臓器(たぞうき)への多発遠隔転移がある 日本肺癌学会編: 肺癌取扱い規約第8版, 金原出版: 6, 2017 より作表 【監修】近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門 主任教授 中川和彦 先生 更新年月:2022年11月 ONC46M001A 病期の決定法