多発性骨髄腫(MM)を学ぶ薬物療法など多発性骨髄腫の薬物療法多発性骨髄腫の薬物療法には、さまざまな種類の薬が用いられます。多くの場合は複数の薬剤を組み合わせた併用療法を行います1-3)。表:多発性骨髄腫の薬物療法で用いられる薬[出典1-6より作表]プロテアソーム阻害薬免疫調節薬抗体医薬(モノクローナル抗体、二重特異性抗体、抗体薬物複合体)CAR-T(カーティ)療法ステロイド化学療法プロテアソーム阻害薬細胞の中で不要になったタンパクを分解する役割のあるプロテアソームを阻害して、骨髄腫細胞に不要なタンパクを蓄積させて、細胞の増殖を抑え、細胞死を誘導する薬です。免疫調節薬や抗体医薬やステロイドなどとの併用療法や、プロテアソーム阻害薬単独で維持療法に使用されます1-3)。免疫調節薬免疫の働きを調節して、骨髄腫細胞の増殖を抑え、細胞死を誘導する薬です。プロテアソーム阻害薬、抗体医薬やステロイドなどとの併用療法で使用されます1-3)。抗体医薬骨髄腫細胞の表面にある特定のタンパクに結合して、免疫の働きにより、骨髄腫細胞の増殖を抑え、細胞死を誘導する薬です2,3)。日本で承認されている多発性骨髄腫の抗体医薬は、「モノクローナル抗体」、「二重特異性抗体」、「抗体薬物複合体」の3種類に大きく分けられます。モノクローナル抗体:さまざまながんの治療で広く用いられている抗体医薬で、分子標的薬の1種です。骨髄腫細胞の表面にある1種類のタンパクに結合し、効果を発揮します。多発性骨髄腫の治療では、ほかの薬剤との併用または単独で用いられます2,3)。二重特異性抗体:骨髄腫細胞の表面にあるタンパクと、免疫にかかわる細胞(T細胞)の表面にある2種類のタンパクに結合することで、効果を発揮します4)。抗体薬物複合体:抗体と抗がん薬を複合させた抗体医薬で、抗がん薬を腫瘍に直接取り込ませて細胞傷害を引き起こし、効果を発揮します5)。CAR-T療法患者さんの血液から免疫にかかわる細胞(T細胞)を取り出し、骨髄腫細胞の表面にある特定のタンパクに反応するように加工して、増やします(CAR-T(カーティ)細胞)。患者さんの体内に戻されたCAR-T細胞が骨髄腫細胞を攻撃します。この治療の対象となるのは、免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬、抗CD38抗体薬を含む複数の治療を受けたことがあり、かつ直近の治療中に病気が進行した、または治療後に再発した多発性骨髄腫の患者さんです3,6,7)。ステロイド副腎皮質ホルモン剤とも呼ばれる薬で、骨髄腫細胞の増殖を抑えます8)。他の薬との併用療法や、支持療法としてステロイド単独で使用されます1-3)。化学療法細胞が増殖する過程のなかで、その一部を阻害することで、骨髄腫細胞の増殖を抑え、細胞死を誘導する薬です9)。化学療法は、他の薬との併用療法や、自家造血幹細胞移植の前処置として使用されます1-3)。【出典】1) 神田善伸監修:ウルトラ図解 血液がん 法研:138-143, 20202) 木崎昌弘監修:よくわかるがん治療 血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫 主婦の友社:118-122, 20203) 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/table.html(2025/5/27参照)4) Shah N, et al.: Leukemia 2020; 34: 985-10055) 日本骨髄腫学会編:多発性骨髄腫の診療指針 第6版 文光堂:78, 20246) アベクマ®点滴静注(イデカブタゲン ビクルユーセル)製品電子添文 2025年3月改訂(第1版)7) カービクティ®点滴静注(シルタカブタゲン オートルユーセル)製品電子添文 2025年3月改訂(第6版)8) レナデックス®錠2mg/4mg(デキサメタゾン錠)製品電子添文 2024年1月改訂(第6版)9) 国立がん研究センター:がん情報サービス 診断と治療 薬物療法[更新・確認日:2025年3月11日]https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/index.html(2025/5/27参照)【監修】 独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター 血液内科 臨床研究部長 角南一貴 先生更新年月:2025年9月ONC46P020A