多発性骨髄腫(MM)を学ぶ病気の経過と病期(ステージ)多発性骨髄腫の経過と分類多発性骨髄腫は、「意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS(エムガス))」、「くすぶり型(無症候性)多発性骨髄腫」という2つの段階を経て、症状があり、治療が必要な「(症候性)多発性骨髄腫」になると考えられています1)。通常、MGUSの段階では治療は行われません。くすぶり型も多くの場合、治療の対象にはなりませんが、進行するリスクが高いと判断された場合は、患者さんと相談した上で治療が行われることもあります(表)2)。MGUSやくすぶり型から、治療が必要な多発性骨髄腫に至るまでの期間(発症年齢、進行速度)や症状は、患者さんによって異なります。表:多発性骨髄腫の経過と病態[出典2より作表] 骨髄中の形質細胞の比率血清中のMタンパク臓器障害など※治療の必要性MGUS(意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症)10%未満3g/dL未満××くすぶり型(無症候性)多発性骨髄腫10~60%未満3g/dL以上(または尿中Mタンパク500mg/日以上)×△進行するリスクが高い場合は治療を行うことがある(症候性)多発性骨髄腫10%以上または骨または髄外の形質細胞腫-〇(1つ以上)〇※臓器障害(高カルシウム血症、腎臓の障害、貧血、骨の破壊)または進行するリスクが高いバイオマーカー(骨髄の形質細胞比率が60%以上、血清遊離軽鎖(FLC比)100以上、MRIでの2ヵ所以上、径5mm以上の限局性の骨または骨髄病変)多発性骨髄腫の病期(ステージ)分類「病期(ステージ)」とは、がんの進行の程度をあらわす指標です。病気の経過に強い影響を及ぼす検査値などの客観的な指標を組み合わせたもので、治療方針を決めるのに役立ちます3)。一般に、多発性骨髄腫では「改訂版国際病期分類(R-ISS(アール アイエスエス)分類)」という分類が用いられます。R-ISSは、特定の染色体異常、血清乳酸脱水素酵素(LDH)、血清アルブミン値、β2ミクログロブリン値に基づいて決定されます4)。表:国際骨髄腫作業部会(IMWG)によるR-ISS分類の基準[出典4より作表]病期Ⅰ以下のすべてを満たす場合血清アルブミン値3.5g/dL以上高リスク染色体異常なし血清β2ミクログロブリン値3.5mg/L未満血清LDH正常範囲病期ⅡⅠでもⅢでもない病期Ⅲ以下のいずれも満たす場合血清β2ミクログロブリン値5.5mg/L以上高リスク染色体異常、または血清LDH高値【出典】1) Dhodapkar MV. Blood. 2016; 128: 2599-26062) 医療情報科学研究所編:病気が見える 血液 第3版:223, メディックメディア,20233) 国立がん研究センターがん対策情報センター編著:患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版:128-131, 学研, 20134) International Myeloma Foundation. International staging system (ISS) and revised ISS (R-ISS).https://www.myeloma.org/international-staging-system-iss-reivised-iss-r-iss(2024/1/25参照)【監修】 独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター 血液内科 臨床研究部長 角南一貴 先生更新年月:2024年4月ONC46N021B