これからがんで入院するあなたへ チーム医療ってなんだろう?
これから始まるがん治療では、主治医だけではなく、さまざまな分野の専門家があなたをサポートしてくれます。家族だって友人だって、あなたの「チーム」の一員です!
「チーム医療」という言葉を、耳にしたことはありませんか? 一昔前の治療と言えば主治医が中心に行うというイメージでしたが、今は、たくさんの医療の専門家が集まってチームを組んであなたの治療を支えてくれます。チーム医療の中心は患者さん、つまりあなたです。困ったときにはそれぞれの専門家に相談しましょう。これからあなたを支えるチーム医療の専門家についてご紹介します。
あなたが病院で直接出会う医療関係者
間接的にかかわっている医療関係者
入院前に診察室で出会う医師や看護師だけではなく、病院にはたくさんの“プロ”がいます。がん治療で入院すると、まず、主治医や病棟の看護師が様子を見に来てくれます。がんの手術前日には、手術を担当する医師や看護師、麻酔科医などが手術の説明にくるでしょう。
麻酔科医は、がん手術が安全に行われるように患者さんの全身状態をコントロールする、麻酔のプロです。手術中には、血圧や脈拍、尿の量など心臓や血液の流れを整えたり、体の中に酸素を十分に送り込む環境を整えたりするなど、患者さんの全身状態に目を光らせてくれます。
また、がんの手術後の痛みを和らげる手助けもしてくれる頼もしい存在です。がんの手術の前日には麻酔の方法、麻酔による合併症などについて説明に来てくれます。また、薬剤師は処方された薬の効果や飲み方、起こり得る副作用について説明に来てくれたり、食事については管理栄養士が「ちゃんと食べられているか」確認に来てくれたり、口内炎などの口のトラブルがあれば歯科医や歯科衛生士が口腔ケアを行ってくれるなど、病状によって対応してくれます。もし気になることがあれば、患者さんから相談してもいいでしょう。たとえば、体を起こして箸で食事をするのが難しかったときに管理栄養士に相談したら、フォークで口に運べるように食材の切り方を工夫して食べやすくしてくれたなど、プロならではの対応をしてくれます。
そのほか、直接顔を合わせる機会はあまりありませんが、患者さんの体から取りだされた組織の一部を顕微鏡で観察して、がんかどうかの診断を行う病理医、検査のプロである臨床検査技師、CTやMRIなどの画像検査を行う放射線技師、画像診断や放射線治療を行う放射線科医なども治療を支えてくれています。
お金など生活の面で困ったら・・・
チーム医療の一員だけれど普段は接点のないスタッフはほかにもいます。たとえば、医療ソーシャルワーカー(MSW)というスタッフがいます。高額療養費制度や介護保険などの公的制度、退院・転院後に利用できる制度のことなど、悩みを聞いてアドバイスをくれる、心強い存在です。具体的には、退院後に利用できる制度について申請方法を教えてもらった、介護申請を行う際、認定調査に立ち会ってくれた、福祉用具の業者を紹介してくれた、などがあります。また、病院で困ったことや、医療費など支払いに関する相談にも乗ってくれます。ところが、患者さん側から「医療ソーシャルワーカーに相談したい」と言わなければ、その存在を知らないまま退院するということもしばしばあるようです。お金や制度のことについて相談できるプロもいるということをぜひ覚えておいてください。
困ったときには聞いてみよう
がんの手術後、あるいは抗がん剤や分子標的薬などによる薬物治療後、もしかしたら後遺症や副作用が出るかもしれません。痛みについては緩和ケアチームが、手や足のリハビリは理学療法士や作業療法士が、声に違和感があれば言語聴覚士など、それぞれのプロが支えてくれます。たとえば、がんの手術後は痛みや皮膚の突っ張り感から腕が上げにくかったり、足が動かしにくかったりすることもあります。そうすると、痛みが増すのではないか、傷口が開いてしまうのではないかと怖がって体を動かすことに臆病になってしまいがちです。でも、リハビリを行うことで、回復していく実感が湧いてくるものです。理学療法士や作業療法士に相談すれば、がんの手術直後から無理なく体を動かす方法を教えてくれます。誰に相談すればいいかわからないという場合は看護師に、こういうことを相談したい、と聞いてはどうでしょう? 患者さんはチーム医療の中心です。せっかくそれぞれのプロがいるのですから、一人で悩まずに頼ってください。
【監修】福島県立医科大学 腫瘍内科学講座 主任教授 佐治 重衡 先生
更新年月:2022年11月
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