肺がんを学ぶ肺がんの基礎知識

肺がんとは※1,2

肺がんとは肺にできるがんのことで、近年、患者さんの数が増加しています。最初に、肺がんではどのような症状がみられるのか、肺がんの原因にはどのようなものがあるのかについて知りましょう。

肺がんとは※1

肺は呼吸をするための器官で、呼吸によって吸い込んだ空気から酸素を体の中に取り入れ、いらなくなった二酸化炭素を外に出す働きをしています。

肺は左右の胸部に1つずつあり、右肺は3つ、左肺は2つに分かれています。口から入った空気は、気管を通り、左右の肺に分かれたあとでさらに枝分かれし(気管支)、最後には酸素と二酸化炭素の交換を行う肺胞(はいほう)にたどり着きます。肺は、胸腔(きょうくう)(胸壁という胸部を作る壁で囲まれた空間)の中にあり、胸膜という二重の膜で包まれています。内側の胸膜は肺の表面を包み、外側の胸膜は胸壁と接していて、その間を胸水が満たしています。

肺がんは、肺の気管、気管支、肺胞の一部の細胞がなんらかの原因でがん化したものです。進行するにつれてまわりの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパの流れにのって転移することもあります。転移しやすい場所はリンパ節、反対側の肺、骨、脳、肝臓、副腎です。

肺の構造※2

肺の構造

がんは遺伝子変異によって起こる※1

私たちの体は非常に多くの「細胞」で構成されています。細胞は体のさまざまな部分で、一定のルールに基づいて分裂増殖を繰り返していますが、そのルールを決めているのは、細胞の核に存在する遺伝子です。これらの遺伝子には自動車のブレーキ、あるいはアクセルなどのような働きをもつものがありますが、なんらかの原因で異常(変異)が起こると、ブレーキがきかなくなったり、アクセルを踏みすぎてしまったりといった状態になります。そのため、分裂増殖のルールに従うことができなくなり、細胞が限りなく増殖してしまいます。このように限りなく増殖する性質をもった細胞が「がん細胞」であり、「がん細胞」が集まったものが「がん」と呼ばれます。

肺がんの原因※1

肺がんの原因はまだ明らかにはなっていません。ただ喫煙は肺がんの原因、あるいは誘因となることが知られています。タバコに含まれているタールなどに由来する発がん物質が体に入り、多くの遺伝子に傷がつくためと考えられています。喫煙以外にも、ラドンガス、職業性のクロム化合物、石綿(アスベスト)、PM2.5なども原因・誘因になりうるとされています。

肺がんの原因 受動喫煙の影響

肺がんの症状※1,3

「この症状があれば肺がんだ」というものはありませんが、咳、痰、血痰(けったん)(血の混じった痰)、発熱、息苦しさ、動悸、胸の痛みなどの症状がきっかけとなり、肺がんの診断につながることがあります。

最も多くみられるものは、咳、痰ですが、これらはかぜや気管支炎でもしばしばみられる症状です。血痰は気管支拡張症や進行した肺結核、発熱はかぜや気管支炎でもよくみられます。息苦しさ、動悸は慢性閉塞性肺疾患や心臓病、胸の痛みは、心筋梗塞や狭心症、大動脈瘤、気胸、胸膜炎などの病気でもよくみられるものです。

このように肺がんではさまざまな症状を呈するため、症状のみでは肺がんと診断することはできません。そのため、さまざまな検査を行って診断を確定していきます。

肺がんの主な症状

  • 咳
  • 痰
  • 血痰
  • 発熱
  • 息苦しさ
  • 動悸
  • 胸の痛み など

肺がんの症状 咳、発熱

肺がんの患者数

がんは日本人の死因として最も多い病気ですが、肺がんの死亡率はその中でも比較的高いことが知られており、2024年には約7.5万人が肺がんで亡くなっています※4。

主な部位別がん死亡率の年次別推移※5

肺がんの患者数 主な部位別がん死亡率の年次推移 男性

肺がんの患者数 主な部位別がん死亡率の年次推移 女性

【出典】

※1 日本肺癌学会編: 患者さんと家族のための肺がんガイドブック 2025年版 胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 肺がんについて Q52, Q55, 金原出版: 132-133, 138-139, 2025

※2 国立がん研究センター がん情報サービス 肺がん 肺がんについて
https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/about.html (2026/6/4参照)

※3 渡辺俊一, 大江裕一郎, 大熊加惠ほか: 国立がん研究センターの肺がんの本改訂新版, 小学館クリエイティブ: 18-19, 2025

※4 国立がん研究センター がん情報サービス がん種別統計情報 肺
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/12_lung.html (2026/6/4参照)

※5 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor1 (2026/6/4参照)

【監修】近畿大学病院 がんセンター 特任教授 中川和彦 先生

更新年月:2026年10月

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