がんと診断されたら不安を受け止める

診断結果の上手な受け止め方

チューリップの花

日本人の2人に1人ががんにかかる時代になり、いつ誰ががんの診断を受けてもおかしくない状況の中、治療法も進歩し、従来に比べて生存率も改善されてきました。それでもやはり、がんと診断されてショックを受けない人はいないでしょう。

がんの初期には自覚症状がないことが多いため、がんと診断されたとき、ほとんどの人は元気で何も病気などないように感じています。

それだけに、「こんなに元気なのに、がんだなんて信じられない!」と、受け入れがたい気持ちになったり、「いったい私がどんな悪いことをしたっていうの?」と、がんにかかったことを罰のように感じてしまったり、「不摂生な生活をしてきたから、こんなことになったのでは……」と、自分を責めてしまったり、「仕事上の人間関係のストレスが原因だ」と人を攻撃したり、さまざまな感情に揺さぶられます。

がんにかかっても生き生きと暮らしている人は世の中にたくさんいますが、やはり最初はショックで何も考えられない段階を経験しています。しかし、最初からがんとうまくつきあってきたわけではないのです。最初は大変なショックを受けて落ち込んでいたとしても、時間が経てば気持ちが落ち着いて、冷静に物事を考えられるようになってきます。

笑顔の女性2人

誰もが、がんといわれると、先々の悪い事ばかり考え不安を抱いてしまいます。そんな時は自分の思いを誰かに聞いてもらうだけで落ち着きますし、自分の言葉で語ることで頭の中が自然に整理されてきます。

どんな時でも周囲の人たちにあなたの素直な気持ちを伝えることであなたを大切に思う人たちが、みんな親身になって話を聞いてくれるでしょう。そのことで、何とか頑張ろうという気力も湧いてきます。

そして、これから始まるがん治療の闘病生活を安心して元気に乗り切れるように、好きな人と楽しく食事したり軽い運動をしたり、今まで通りの日常生活を大切にするようにしましょう。

自分の病状を正しく知る

医師の診察

初めての告知の場面で、冷静に医師の話に耳を傾け理解することは、誰にとっても難しいものです。頭の中が真っ白になって、何を説明されたのか覚えていないというのは、ごく普通の反応です。

とはいえ、治療を受けるのは自分自身です。まずは現在の自分自身の病状を正しく理解することが不可欠です。自分自身の病状というと、とかくがんに関連した臓器だけに気をとらわれがちですが、今までにかかった病気や現在治療している病気も含まれます。その上でこれから行われる治療を理解するように努めましょう。

自分のことは、つい悲観的に受け止めてしまいがちですし、やはり気持ちが動転して、大切なことを聞きもらしてしまう可能性もあります。医師からの説明をあなたと一緒に客観的に聞いてくれる人がいると、あとで情報を確認することもできて安心です。

手帳にスケジュールを書く

また、最近では、治療の選択が患者さん自身に委ねられることもあります。そのために気持ちが落ち着いてから、日を改めて家族や信頼できる友人と一緒に説明を聞く事を医療者はお勧めしています。

医師の説明を聞くときには、メモをとることを忘れずに。医師によっては会話を録音してもいいと言ってくれますので、恐れずに聞いてみるのもいいでしょう。耳慣れない専門用語が出てきたときも、メモをしておいてあとでインターネットなどで調べれば、理解が深まります。

心の負担を軽くするために

菜の花畑

がんになると、治療のことだけでなく、闘病中の生活のことが気になります。働いている人なら、仕事への影響が一番気になるでしょうから、休職した方が良いのかも含めて、詳しく質問しておきましょう。子どもがいる人は、子どもの学校行事などさまざまな予定があるはずです。

がんにかかったからといって、何もかもを諦める必要はありません。「子どもの結婚式が控えているから、入院はそのあとにしたい」、「孫が産まれる予定なので、無事に産まれたことを見届けてから手術を受けたい」など、治療の緊急性と、個人の生活とのバランスを上手にとっていくためにも、自分のやりたいこと、やらなければならないことがある場合は、積極的に医師や看護師に知らせましょう。ただし、命に関わるような緊急の場合は、無理を言わずに医師のアドバイスに従いましょう。

また、がんの治療のため、自分の役割を周囲の人に一時的に代わってもらわなければならない場面が出てくるかもしれません。自分にできないことは、どんどん周囲に手伝ってもらいましょう。「迷惑をかけて申し訳ない」と思うこともあるでしょうが、今助けてもらったぶん、いずれ何らかの形で自分が役に立てることが必ずあるはずですから、甘えられるときは甘えてしまって構いません。

頼る人がいない方は、公的機関を利用したり医療者に相談するのも良いでしょう。お世話になった人に直接お返しできなかったとしても、感謝の気持ちを持って、困っている誰かの役に立てば良いのです。そうすることで、人と人との温かい関係が広がっていくのです。つらいときはひとりで抱え込まない、がんばりすぎないことを心がけましょう。

料理をする夫婦

どうしても気分の落ち込みが激しく、食欲がない、眠れない、何をする気も起こらないなどの状態が続くようなら、精神科・心療内科で専門的な治療を受けた方が良い場合もあります。「精神腫瘍科医」といって、がん患者さんの心のケアを専門に行なう医師も少しずつ増えてきました。それだけ、がんにかかったときは精神的なケアが必要だということです。今後、治療を進めていく過程で、さらに気分の落ち込みを実感することもあるかもしれません。気分の落ち込みがあまりに激しいときは、早めに専門家に相談することが大切です。

がん患者がたどる心のプロセス

第一段階衝撃と否定・絶望の時期

がん告知や再発、転移の診断を受けたとき、患者さんはショックのあまり診断結果を認めようとせず、「何かの間違いでは?」と否定します。このとき、まるで現実ではないような無感覚に陥りますが、これは心理的に距離を置いて危機を遠ざけようとする、自己防衛の働きと考えられています。

第二段階抑うつ、心身の異変に気付く時期

最初のおよそ1週間が過ぎると、今度は物事に集中できない、眠れない、食欲がないなどの心身の変調に気付き始めます。「なぜ自分だけが、こんな目に合わなければいけないのか」という怒りや孤独感にさいなまれ、不安と悲しみにおそわれます。

第三段階再適応、立ち直りの時期

さらに約2週間たつと、気持ちが少しずつ落ち着き、普段の自分を取り戻すことができるようになります。がんにかかったことを受け入れ、がんに立ち向かっていこうという気持ちに切り替わるのです。この段階に達すると、がんの情報を集めたり、同じ体験をした人に話を聞いてみようと動き始めることができるようになります。ここまでたどりつけば、ほとんどの人は、がんとともに生きていく心の準備が整います。

*心の動きは、必ずしも順番どおりではなく一日の間でも変化しますし個人差があります。このような反応は人が生きていくために必要な心のプロセスなのです。

【参考文献】「女性のがん 心のケア」大西秀樹著 2008年 土屋書店
【監修】近畿大学医学部 血液・膠原病内科教授 松村到 先生

更新年月:2026年6月

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