急性リンパ性白血病(ALL)を学ぶ分子標的薬の副作用

分子標的薬(TKI、抗体医薬品)の主な副作用について説明します。副作用の症状があらわれたら、すぐに医師や看護師、薬剤師などの医療スタッフに相談してください。

※急性リンパ性白血病(ALL)の治療に使われる分子標的薬には複数あり、薬剤によって副作用の種類は異なります。1種類の薬剤で、下記の副作用がすべてあらわれるわけではありません。

骨髄抑制(白血球・赤血球・血小板の減少)

分子標的薬による治療でも、白血球や赤血球、血小板の数が減少することがあります1)。骨髄抑制による症状などについてはこちらをご覧ください。

皮膚の発疹

皮膚が赤くなるなどの皮疹ができることがあります2)。かゆみ止めの塗り薬や内服薬を処方されている場合は、医師の指示に従って使用してください。
また、刺激の少ない綿素材などの肌着を着用する、紫外線を避ける、熱いお湯(40度以上)を使わない、皮膚を清潔に保ち保湿剤を塗るといった自分でできる対策もあります3)

むくみ・体重増加・胸水

体内に水分が貯まりやすくなり、急激に体重が増加したり、全身のむくみなどがあらわれることがあります。また、胸水きょうすいといって胸に水分が貯まり、咳や息苦しさなどの症状があらわれることもあります2)

筋肉のけいれん・筋肉痛

目の周りの筋肉がぴくぴくしたり、全身の筋肉痛が起こることがあります2)

肺高血圧症

肺動脈の血圧が上がることで、呼吸困難などの症状が起こる場合があります。服用を始めて数年経ってから起こる場合もあります2,4)

虚血性心疾患、脳梗塞、末梢動脈閉塞疾患

分子標的薬の種類によっては、動脈硬化性の病気(狭心症や心筋梗塞こうそくなどの虚血性心疾患、脳梗塞、末梢動脈閉塞疾患など)が起こりやすくなることが知られています4)

肝機能障害、静脈閉塞性肝疾患(VOD)/類洞閉塞症候群(SOS)

肝臓の機能を示す検査値に異常がないか、定期的に検査を行って調べます2)
また、分子標的薬の種類によっては、肝臓の血管がふさがれることで、肝臓の働きが低下する疾患(静脈閉塞性肝疾患(VOD)/類洞るいどう閉塞症候群(SOS))が起こることがあります。肝臓の腫れ、右側の肋骨ろっこつ 下部の痛み、白目が黄色くなる、かゆみ、皮膚が黄色くなる、急に体重が増える、といった症状があらわれます。特に造血幹細胞移植後に起こりやすいことがわかっています5)

腫瘍崩壊症候群

治療によって大量のがん細胞が短期間で死滅したことで、がん細胞内の成分などが体内に蓄積し、血液中の尿酸が増えたり、電解質のバランスがくずれてさまざまな症状が起こることがあります6)

インフュージョンリアクション

抗体医薬品(注射薬)の点滴中や点滴直後に起こる有害反応です。頭痛、めまい、悪寒、息切れ、吐き気、血圧低下、発疹など、さまざまな症状があらわれます7)

神経学的事象

頭痛や不眠、ふるえなどの症状が生じることがあります。重症になると、けいれん発作などが起こることもあります5)

サイトカイン放出症候群

抗体医薬品の投与によって体の免疫機能が過剰に反応し、発熱や吐き気、悪寒、筋肉痛など、さまざまな症状を引き起こすことがあります5)

【出典】

1) 静岡県立静岡がんセンター:学びの広場シリーズ・からだ編8 抗がん剤治療における骨髄抑制と感染症対策(造血幹細胞移植を除く)(第2版2刷):5, 2024
https://www.scchr.jp/cms/wp-content/uploads/2024/04/kotsuzui-yokusei.pdf (2024/7/26参照)

2) 宮崎仁:もっと知りたい白血病治療 患者・家族・ケアにかかわる人のために 第2版 医学書院:76-78, 2019

3) 静岡県立静岡がんセンター:学びの広場シリーズ・からだ編3 抗がん剤治療と皮膚障害(第9版2刷):8-9, 23-34, 2024
https://www.scchr.jp/cms/wp-content/uploads/2024/04/hifu-shougai.pdf (2024/7/26参照)

4) 小室一成監修、日本腫瘍循環器学会編集委員会編:腫瘍循環器診療ハンドブック メジカルビュー社:86-89, 2020

5) 松村到編:急性白血病診療テキスト 中外医学社:264‐267, 274-277, 2020

6) 国立がん研究センター:がん情報サービス 腫瘍崩壊症候群 [更新・確認日:2020年12月24日]
https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/shuyohokaishokogun.html (2024/7/26参照)

7) 日本がん看護協会監修、森文子ら編:オンコロジックエマージェンシー 医学書院:134, 2016

【監修】 金沢大学医学部血液内科 教授 宮本 敏浩 先生

更新年月:2024年9月

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