急性リンパ性白血病(ALL)を学ぶ治療の流れ急性リンパ性白血病(ALL)の治療の流れ急性リンパ性白血病(ALL)の治療の中心は薬物療法で、①寛解導入療法、②地固め療法、③維持療法の三段階に分けて行われます(図)。また、脳と脊髄(せきずい)からなる中枢(ちゅうすう)神経系(CNS(シーエヌエス)とも呼ばれます)に白血病細胞が浸潤しやすいことから、中枢神経への浸潤を予防するための治療も並行して行われます。患者さんによっては、これらに加えて「造血幹細胞移植」が行われることもあります1-4)。図:急性リンパ性白血病(ALL)の治療の流れ(出典1-4)より作図)急性リンパ性白血病(ALL)の治療とフィラデルフィア(Ph)染色体急性リンパ性白血病(ALL)は、「フィラデルフィア(Ph)染色体」と呼ばれる染色体の異常の有無と、患者さんの年齢などによって治療法が変わってきます3,4)。ALLの主な治療法については、「小児ALLの主な治療法」または「成人ALLの主な治療法」をご覧ください。フィラデルフィア(Ph)染色体とは?フィラデルフィア(Ph)染色体は、急性リンパ性白血病(ALL)の一部の患者さんと、慢性骨髄性白血病の患者さんにみられる染色体の異常です。Ph染色体をもつALL患者さんの割合は、小児では全体の3~5%程度とされています4)。一方、成人では全体の20~30%を占めており、50歳以降では約半数がPh染色体をもっているというデータもあります5)。ヒトの染色体は23対46本ありますが、フィラデルフィア(Ph)染色体は、9番目と22番目の染色体が途中から切れて入れ替わって融合したものです(相互転座)。それぞれの染色体の切り口にあるBCR遺伝子とABL遺伝子が融合し、BCR::ABL遺伝子が新しく形成されます1)。Ph染色体をもつ患者さんでは、このBCR::ABL遺伝子からつくられる蛋白(チロシンキナーゼ)に作用する薬が治療の主体となります3,4)。【出典】1) 宮崎仁:もっと知りたい白血病治療 患者・家族・ケアにかかわる人のために 第2版 医学書院:40-49, 65-66, 20192) 国立がん研究センター:がん情報サービス 白血病〈小児〉 治療https://ganjoho.jp/public/cancer/leukemia/treatment.html#anchor1 (2024/7/26参照)3) 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版 金原出版:67-70, 20234) 日本小児血液・がん学会編:小児白血病・リンパ腫診療ガイドライン2016年版 金原出版:8-9, 20165) 長藤宏司:日内会誌 107:1301-1308, 2018【監修】 金沢大学医学部血液内科 教授 宮本 敏浩 先生更新年月:2024年9月ONC46N019B