急性骨髄性白血病(AML)を学ぶ分子標的薬の副作用

分子標的薬BCL-2阻害薬FLT3阻害薬抗体医薬品)の主な副作用について説明します。副作用の症状があらわれたら、すぐに医師や看護師、薬剤師などの医療スタッフに相談してください。

※急性骨髄性白血病(AML)の治療に使われる分子標的薬には複数あり、薬剤によって副作用の種類は異なります。1種類の薬剤で、下記の副作用がすべてあらわれるわけではありません。

骨髄抑制(白血球・赤血球・血小板の減少)

分子標的薬による治療でも、白血球や赤血球、血小板の数が減少することがあります1)。骨髄抑制による症状などについてはこちらをご覧ください。

腫瘍崩壊症候群

治療によって大量のがん細胞が急速に死滅したことで、がん細胞内の成分などが体内に蓄積し、血液中の尿酸が増えたり、電解質のバランスがくずれてさまざまな症状が起こることがあります2,3)

QT間隔延長

不整脈の一種であるQT間隔延長が起こることがあります。そのため、治療前や治療中は、定期的に心電図検査などを行います2)

インフュージョンリアクション

分子標的薬(注射薬)の点滴中や点滴直後に起こる有害反応です。頭痛、めまい、悪寒、息切れ、吐き気、血圧低下、発疹など、さまざまな症状があらわれます4)

肝機能障害・静脈閉塞性肝疾患(VOD)

肝臓の機能を示す検査値が異常を示すことがあります2)
また、肝臓の血管がふさがれることで、肝臓の働きが低下する疾患(静脈閉塞性肝疾患(VOD))が起こることがあります。痛みを伴う肝臓の腫れ、白目や皮膚が黄色くなる(黄疸おうだん)、お腹に水が貯まり体重が増える、といった症状があらわれます。特に、投与後に造血幹細胞移植を行うと、VODが起こりやすくなるとされています2,5)

【出典】

1) 静岡県立静岡がんセンター:学びの広場シリーズ・からだ編8 抗がん剤治療における骨髄抑制と感染症対策(造血幹細胞移植を除く)(第2版2刷):5, 2024
https://www.scchr.jp/cms/wp-content/uploads/2024/04/kotsuzui-yokusei.pdf(2024/7/26参照)

2) 松村到編:急性白血病診療テキスト 中外医学社:98-99, 158-159, 166-167, 2020

3) 国立がん研究センター:がん情報サービス 腫瘍崩壊症候群 [更新・確認日:2020年12月24日]
https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/shuyohokaishokogun.html (2024/7/26参照)

4) 日本がん看護協会監修、森文子ら編:オンコロジックエマージェンシー 医学書院:134, 2016

5) 国立がん研究センター:がん情報サービス 造血幹細胞移植の副作用・合併症 7. 肝中心静脈閉塞症/肝類洞閉塞症候群[更新・確認日:2023年12月14日]
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/HSCT/hsct03.html#anchor7 (2024/7/26参照)

【監修】 金沢大学医学部血液内科 教授 宮本 敏浩 先生

更新年月:2024年9月

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